傷付いた(?)ツマグロヒョウモン
8月2日6時06分。ヒョウモンチョウ(豹紋蝶)の一種と思われる蝶が、タイルの上でこごみ込むようにして翅を煽り上げていました。
羽化したばかりの翅が進展するのを待っているのだろうと思いました。
最初に見付けたのは、真っ先に庭に飛び出して行った子犬でしたが、変にちょっかいを出さないでくれて助かりました。
が、やがて普通でない様子に気が付きました。目も触角も胴もいたって健常に見受けられるのに、前翅の縁が左右ともに決定的に折れ曲がっているのです。それで、一生懸命に羽ばたいても飛び上ることが出来ません。前に移動するばかりです。
同日7時20分にはタイル脇にあるアジュガの上に居ました。翅の折れ曲がりは相変わらずのようです。
8時12分。なんだか弱って来ているように見えます。
8時57分。思い切って飛翔を試みたようですが、直ぐに失速してしまいました。痛々しいことですが、どうすることも出来ません。
仲間のツマグロヒョウモンが会いに来ている
驚いたことに、翌8月3日の朝にも、少し移動したらしく野菊の株の中に同じチョウが見られました。別の元気なツマグロヒョウモンが一頭、寄り添うように訪れて来てくれていたので分かったのです。8時59分のことでした。
ツマグロヒョウモンは「褄黒豹紋」と書かれ、メスの翅のツマ(褄・端)がくっきりと黒く飾られていることから、とかくややこしいヒョウモンチョウ(豹紋蝶)のうちでも、分かり易いものです。学名はArgyreus hiperbiusであり、hiperbiusとはラテン語で「より強力な」という意味であるとのこと。なるほど、ほとんど世界中に分布しており、しかも年に4~5回も発生(他のヒョウモンチョウ類のほとんどが1回)を繰り返すという逞しさです。別の機会に撮った写真に見るとおり、良く見かける元気いっぱいの種類です。
キュウリに砂糖水を染まして
例の孵化したばかりのヒョウモンチョウは、気のせいか、水気を失って胴体も細くなってしまっているように見えました。
思い付いて、細かい切れ目を十文字に入れたキュウリの一片にほんの少しの砂糖を加えて、近くに置いてみました。
すると、夢中になって吸い込み始めました。口吻がせわしなく動かされている画面もあります。12時57分前後のことでした。なんだか、元気を取りもどしつつあるように見えます。
最後の目にした様子がこれです。14時03分でした。残念ながら、翅の縁は初めに見付けた時とほとんど変わらず、ともに無残に折れ曲がったままです。長く待ってみたのですが、こんな風になった原因は分かりません。
8月4日以降は、かなり丹念に探してみても見当たらなくなりました。おそらく地に墜ち、早速にそれをアリなどが片付けてくれたものでしょう。
万に一つの可能性はあります。キュウリに染ました砂糖を取り入れ、一休みを置いてから、ヒョウモンチョウは飛び立ったのです。
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。