いま騒がれている昆虫 「チュウゴクアミガサハゴロモ」


庭のアケビに

 この年の初夏も7月2日のこと、植えたばかりの三つ葉アケビに初めての実が付いているのを見付けました。わずかに紫色を帯びた灰色の団子が一個だけ頑張っていて、なんとも微笑ましいものでした。

 と、実に続いている葉や蔓のあちこちに見慣れぬ茶色のものがゾロゾロと・・・鉄錆色!・・・ピンときました。
 少し前に私はアオバハゴロモについての記事を書いたことがあり、それをきっかけに、昆虫に詳しい方から情報を寄せられていたのです。


「チュウゴクアミガサハゴロモ」という中国原産の外来種が、このところ東京都の多摩地域でも急激に増殖拡散しつつあるとのこと。鉄錆色をした翅と、その外縁にあるはっきりした三角形の白斑が特徴であるので、見分けるのは難しくないとも。

チュウゴクアミガサハゴロモ

 そもそもハゴロモというのは、カメムシ目(アブラムシやカイガラムシが代表)に属する昆虫の中でもセミに近い仲間で、ストロー状のものを差し込んで植物の汁を吸います。
 いくつも種類があるうち、「チュウゴクアミガサハゴロモ」は名前の通り中国大陸原産で、ほんのここ数年のうちに海外に渡ったものの、そのすさまじい増殖ぶりのために世界的規模で警戒されているものです。
 2010年に韓国で増殖しているのが確認され、2018年にトルコとフランス、2021年にドイツ、2022年にはイタリアとロシアというふうに拡大し、日本では2017年に大阪府で初確認されて以降、先ず西日本の各地に拡散し、やがて東日本にも広がりました。2025年6月には東京都多摩市の公式ホームページや八王子市の研修農場などの報告で、広範囲に農作物が被害を受けるほどに大発生していると警告されるまでに至っています。

在来種アミガサハゴロモとの違い

 日本には「アミガサハゴロモ」という在来種の昆虫がいます。
 アミガサ(編笠)とは上手く名付けたもので、なるほど、翅の感じが日本伝統の編笠を思わせ、時には阿波踊りなどに使われるような折り込んだ形に見えることさえあります。
 在来種のものは成虫体長が12mm前後で中国原産のものよりもいくらか小型。何よりも翅が写真のように暗緑色ということで容易に区別が付きます。

アミガサハゴロモ

Webより転載 右側は幼虫

 問題があるとされているのは食性の違いです。日本在来種のアミガサハゴロモが取り付くのは主としてカシ類のみに限られるのに対して、チュウゴクアミガサハゴロモは恐ろしく広食性で、木々はもとより、多くの農作物に被害を与えている実態が観察されています。果樹に限ってもナシ、ウメ、モモ、スモモ、ブドウ、ミカン、カキ、イチジク、ブルーベリー、オリーブ、キウイフルーツ、リンゴ、クリなど・・・野菜についてはナス、トマト、ピーマン、キュウリ、トウモロコシ、スイカ、エダマメ、オクラ、モロヘイヤといったふうでほとんど歯止めがないようです。「なんでもござれ」というところが荒々しいまでの繁殖力を自ら喧伝しているかのようです。

手遅れにならないように

 外国から日本に入って来て、在来の生態系を大きく揺るがすに至っている生物といえば、先ず、アライグマ、ガビチョウ、ブラックバス、アレチウリ、センダングサ・・・といったところが思い浮かばれます。今に至っては駆除しようにも手の施しようもないといった剛の者ばかりですが、ガビチョウを除けば北米からの外来種です。

多摩川の河原を埋め尽くすアレチウリ アメリカさんには叩かれっぱなしなのかというと・・・例えば日本原産と言われるクズが、あちらに持ち込まれてどういうことになっているか・・・お互い様といったことでは済まない事態を引き起こしているようです。
 チュウゴクアミガサハゴロモがそんな先輩たちに並ぶことがないように、良く見張って、先手先手と対処しなければなりません。

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

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