小品でありながら
「方丈記」は全編で400字詰原稿用紙25枚ばかりの小品でありながら、私にとっては生涯で読んだ本の中で一二を争うほどに印象深いものになっています。
作者の「鴨長明」は琵琶や琴の名手でもあったせいか、諸行無常を結晶させたような文章が深いリズムを伴っており、読み進んでいるうちに私自身の声が自然に引き出されて音読に移っている・・・といった風です。
天災人災のルポ
方丈記は「災害の文学」と呼ばれることがあるそうです。
鴨長明は何事も探求して極めようとする徹底性、冷徹な観察力、結構な行動力を備えた人でした。
そんな人が21歳の若さで相続争いに敗れてから、30年間も、平安末期の末法感漂う洛中洛外を転々としたのですから、凄い物を見聞することになります。
「安元の大火」「治承の竜巻」「治承の遷都」「養和の大飢饉」「養和の大地震」・・・群がり起こった天災人災の実見禄は、実際の体験から何十年も温められてから表わされたものであるだけに、簡潔でありながら叙事詩を読むような緊迫感があり、読んでいる方の緊張も次第に高まって、総毛立つような場面さえいくつかあります。
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長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。