昭和50年(19759)の頃、私は東京都府中市にある少年矯正施設に関係しておりました。東京はアメーバのように近郊へ近郊へと侵食を続けていましたが、矯正施設は塀に囲まれていますからスポットのように小さな自然が残されておりました。
その雑木林と果樹園との間で、これまで見たことのない中型の野鳥に出会ったのです。山国育ちの私が知っている「ヤマドリ」や「キジ」よりも小さく、尾も短く、全体にガッシリした感じの美しい鳥でした。ところが、それからはとんと姿を見せません。「幻の鳥・・・ご存知の方はお知らせください」というあやふやなスケッチ入りの手配書を事務所に張り出したものでしたが、情報は一つもありませんでした。
何年も何年もたってから、ようやく再会し、「コジュケイ」という鳥だと知れました。・・・挨拶してもらいます。
幻?まさか でも、あまり見られたくないです
背面は銀色がかった下地に赤みを帯びた褐色の斑。前面は、首に銀色のスカーフ、胸から腹は薄いオレンジ色の下地に黒い斑点。なかなかに渋くて美しい鳥です。目も大きく目立ちます。
大正年間に中国の南部から日本に移入されたものだそうですが、大陸から来たわりには、鳴き声は轟き渡るほどに大きいのに、いたって用心深く、なかなか姿を見せません。「ピック グイ ピック グイ」と鳴くのを日本では「ちょっと 来い
ちょっと 来い」と聞きなしていますが、「お前の方から出てこい」とじれったがる人がいるほどです。 “私の幻の鳥 「コジュケイ」” の続きを読む
長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。
身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。