春の河原で奇妙な にらめっこ 「ヒバリ」」Ⅱ

 「ヒバリ」は東京版レッドリストで「絶滅危惧種Ⅱ類」に指定されています。ヒバリが生きてゆくのに必要な野原が失われてゆくにつれ、最近、ことに東京都では数を減らしているのだそうです。

ふいの出会い

 2019年2月20日(水)は、抜けるような晴天にめぐまれ、風もなく、気温が18℃まで上がるという4月並みの陽気になりました。
 私が多摩川の河川敷に付いたのは午前8時半頃でしたが、靄が軽く残っていて、堤の上の淀みで4人のお嬢さんたちがボートの練習をしているのを、遠くから逆光でとらえると、こんなふうになかなかの雰囲気です。
 失礼ながら無断での写真ですが、4人はボートを漕ぐ時間よりも笑い合っている方が多いようで、ラフティングに備えての猛訓練というよりも、女子大生の「多摩川同好会」といった雰囲気でした。

 私はヤブの中の道を上流に向い、多くの野鳥と会いましたが、わけても、季節はずれの気温の上昇で川面にムシが湧き出たのでしょう、ハクセキレイたちがさかんに飛び回る空中の姿をファインダーに捉えようとして長く楽しみました。その間に、偶然、対岸の木立の奥でひっそりと獲物を待っているノスリ(タカの一種)がファインダーに入って来て、びっくりさせられたりしました。
 大小の石がゴロゴロしている河原を引き返そうとしたとき、ほんの2・3歩先で動くものがあり、10メートルほど走って振り向きました。
なんとヒバリ!髪の毛をきっちりと編み上げたような正面の印象が特徴的です。後で写真の情報を確認すると11:05分のことでした。向こうもびっくりしたようです。

びっくりしたぁ!

あやしいやつ?

 石の上でしきりに怪しんでいます。11:05

 向きを変えましたが同じ石の上です。11:06

 ようやく動き出しました。11:09

「すくみの術」を使おう

 と、ある石の上で、こごんだまま少しも動かなくなり、そのまま固まってしまいました。11:09
 その石を中心に、こちらは半径7~8mほどの円を描いてでゆっくりと移動しましたが、少しも動きません。斜め、真正面、真横からを見ました。微動だにせず、目だけはしっかりとこちらに据えています。
 真横の写真には「テントウムシ」らしきものが右足に当たっているようですが、食べようともしません。拡大して見ますと、虫は「ナナホシテントウムシ」です。
 カメラから目を離して小石を鳴らさないように静かに移動し、ふたたび捉えようとすると、地味な模様が周囲に溶け込んでしまっていて、何処にいるのか見付けるのは難しいことでした。「すくみ」は効果の高い護身術です。

 ようやく、「すくみ」を解いて動きだしました。11:23

あなたはしつこいですね なにを言いたいのですか?

まあ 好きにして

さよなら

 しばらく石の間をあちこちとついばんでいましたが、ついにヒバリ特有のヘリコプターのような軌跡で舞い上がり、草地の方に飛んで行ってしまいました。11:32

 私と出会ってから河原を動き回ること4分間、それから「すくみの術」を続けてにらめっこをすること14分間、解いて歩き回ること9分間、合計32分間のおつきあいでした。

 ヒバリにはひろびろとした野原が必要です。というのも、地面に巣を作って子育てをしますから、ネコやヘビ、アライグマやハクビシン、時にはドブネズミなどの天敵から身を守る必要があるからでしょう。
 多摩川の河川敷のほんの一部にはそうした環境がありますが、夏には大きな機械が入って根元から刈り払われますし、年に1・2度は大雨のために濁流の中に水没してしまいます。
 どうやってヒバリたちは生き延びているのでしょう。
 どうして私と半時間も付き合ったのでしょう。
 なにを訴えたかったのでしょう。私は勝手なキャプションを付けましたが・・・
 私との間で交わされただんまり劇には、なにか深い意味が込められていたので  しょうか。

 それにしても、堂々と出会い、ふるまい、堂々と去って行きました。

投稿者: ロウボウ

長い間たずさわってきた少年矯正の仕事を退官し、また、かなりの時が経ちました。夕焼けを眺めるたびに、あと何度見られるだろうと思うこの頃。 身近な生き物たちとヒトへの想いと観察を綴りたいと思います。

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